第一次ベビーブームで生まれた団塊の世代が75歳以上に達することで、介護費や医療費といった社会保障費の急増が懸念されている2025年問題。そんな2025年問題に向けて、新たに認定介護福祉士という資格が新設されます。
そもそも認定介護福祉士とは介護福祉士の上位資格にあたり、介護士の新しいキャリアパスとして、これからの介護サービスの改善に努める専門士です。
資格の運営は日本介護福祉士会が認定を行うことが決まっていますが、2016年2月の現時点では、名称も「認定介護福祉士(仮称)」となっており、実施される時期も未定となっています。ただ、2025年には介護福祉士の2~3%が認定介護福祉士となることを想定しているようです。
認定介護福祉士の役割
介護施設での相次ぐ高齢者虐待や介護事故の最大の原因は介護士不足による激務と言われていますが、その根底では介護士の質の低下も大きな課題となっています。そこで、現場スタッフの研修や指導が認定介護福祉士の役割とされています。厚生労働省が発表した資料では下記のように表記されています。
認定介護福祉士のねらい
- 利用者のQOLの向上
- 介護と医療の連携強化と適切な役割分担の促進
- 地域包括ケアの推進
認定介護福祉士の条件
国家資格である介護福祉士の上位資格ということもあり、対象となる介護士にはそれなりに厳しい条件が求められています。確定ではありませんが、こちらも厚生労働省が発表した認定介護福祉士の条件は下記のようになっています。
- 実務経験が7~8年以上
- 介護チームのリーダーとしての実務経験を有することが望ましい
- 居宅、居住(施設)系サービス双方での生活支援の経験をもつことが望ましい
介護福祉士資格を保有していることはもちろん、必要に応じて280時間と170時間の二段階の研修を受けなければならないなど、かなり厳選されることがわかります。
認定介護福祉士の給料
現時点では厚生労働省による明確な発表がありませんが、認定条件やその役割から一部の噂では地方公務員と同等の給与体制を取るとも囁かれています。ちなみに、平成26年度の地方公務員平均年収は約580万円となっており、最も高い東京都では年収736万円です。
認定介護福祉士の仕事内容
厚生労働省が発表した認定介護福祉士の役割は下記の通りとなっています。
- 介護職チーム(ユニット等、5~10名の介護職によるサービス提供チーム)に対する教育指導、介護サービスマネジメントを行い、介護職チームのサービスの質を向上させる役割(施設・事業所の介護サービスマネージャー)
- 地域包括ケアを推進するため、介護サービス提供において他職種(医師、看護師、リハビリ職等)との連携・協働を図る役割
- 地域における、施設・事業所・ボランティア、家族介護者、介護福祉士等の介護力を引き出し、地域の介護力の向上を図る役割(地域における介護力向上のための助言・支援をする者)
おそらく、現場での介護業務ではなくサービス提供責任者のような立場に近く、介護職員と利用者の双方のマネジメントが主な業務となりそうです。
例えるのであれば、介護支援専門員(ケアマネジャー)の上位キャリアにあたる主任介護支援専門員に似たポジションに近いと考えられます。主任介護支援専門員は、公的機関の地域包括支援センターで多くのケアマネを統括し、様々な利用者の要望にも対応します。
つまり、認定介護福祉士も入居者数といった一定の条件を満たす介護施設で介護福祉士の研修を行ったり、介護指導していくことが大きな役割となりそうです。
現場における本当の介護のプロが求められている
今でこそ実務者研修という半年間の研修を修了しなければ介護福祉士は取得できませんが、以前は3年という介護経験だけで介護福祉士になれました。そのため、スキルや知識が不足している介護福祉士も多く、それがサービスの質の低下につながっている要因とも言われています。なかには「介護のプロのはずが看護師の指示を待つ介護士が多すぎる」と看護師も困惑しているそうです。
そのため、介護福祉士=介護士の最上位資格と言い難いのが実情。そういった状況を改善するためにも認定介護福祉士が新設されました。昨今の増えすぎたケアマネジャーをふるいにかけている流れと同様に、認定介護福祉士を持っていなければ満足のいく給料や待遇にならない時代となりそうです。