介護業界では人材不足が大きな問題となっていますが、なにも人手が足りないと叫ばれているのは介護士だけではありません。昨今では、事業所や介護施設の運営を任される管理職も不足しています。いえ、正確には管理職として適切な人材がいないと言うべきでしょう。
介護業界の管理職に求められる条件
介護業界の管理職に求められる条件で最も重要な項目は他でもなく、あらゆる状況に精通した豊富な現場経験です。
その他にも、介護求人サイトでよく目にする管理職の条件としては、介護福祉士資格を持っていること、リーダーや主任といった経験があること。また、施設業態によっては介護支援専門員や認知症介護実践者研修といった資格の保有などが応募条件として挙げられています。
介護業界の管理職は論理的に考えて少ない現状
しかし、専門職に関しては、豊富な現場経験を持つ人材はやはり現場での仕事を好む傾向があります。特に介護の場合、介護士は肉体労働ですが、管理職は完全にデスクワークとなり、業務内容に大きなギャップが生まれてしまいます。
またその逆で、マネジメント業務を好む介護士も少なく、成り行きから管理職にキャリアアップしても、書類や連絡など畑違いの業務内容に嫌気がさして、せっかく管理職になったのに現場に戻ってしまう介護士も少なくありません。
無知な管理職が廃業へと導く
民間企業の介護事業参入全盛期に多く見られたのですが、デイサービスのホーム長や有料老人ホームの施設長を、一般企業で管理職だった人材が勤めていました。
元々、そういった介護施設で働いていた職員のKさんから聞いた話ですが、経営といった観点では素晴らしいものの、肝心の介護の知識があまりにも不足していて、現場スタッフの士気がとにかく悪かったとのことです。
さらには、ギリギリの職員配置、サービス残業の強制、休日の呼び出しなど、一般企業であれば「ブラック企業」で片付いた言動を平然と行なっていたそうです。
その結果、開設1年目で介護職員の半数以上が退職。人員の大半を派遣社員で補う状態が数年続き、結果的に廃業へと追い込まれました。
人材がすべての介護事業で、現場で働く介護職員を「人財」と認識できない管理職が招いた現状だと、Kさんは笑いながら語ってくれました。いいえ、私は笑えません。
管理職の給料や待遇も大きな問題
一般企業で働く管理職の平均年収は約600万円と言われていますが、介護業界で働く管理職の平均年収は約400万円となっており、業種別に見ても介護は最低水準となっています。さらに、人材不足を補うため管理職が毎晩のように夜勤スタッフとして宿直しているケースも珍しくありません。
上層部から経営と責任の全てを任された管理職ですが、それに見合う給料や待遇が得られていないこも大きな問題となっています。
管理職の求人を見極める方法
では、これから介護業界の管理職を目指す方は、どういった事に注意しなければならないのでしょうか。管理職の転職で失敗しないためには、下記のポイントに注意して、しっかりと求人を見極めることが重要になってきます。
管理職のオープニングは危険
介護求人ではオープニングスタッフが人気の求人となっていますが、管理職に関しては注意が必要です。新設された介護施設には、運営方針やマニュアル作成を施設長が行う場合もあります。熱意がある方であればやりがいにつながりますが、既存施設の求人よりも業務内容はかなりハードでしょう。
管理職兼務はかなりハード
また「主任兼任」や「相談員兼任」など、もれなく兼務が付いてくる求人も危険です。ただでさえ過酷な管理業務に加え、他職種の仕事もということになれば、絶対に手が回らなくなることが目に見えています。
候補や補佐といったサポートが狙い目
入社後、いきなり事業所や介護施設のトップを任せられる求人はかなり危険です。引き継ぎがあれば良いのですが、もしかすると前任の管理者が逃げ出した可能性もあります。
管理業務で引き継ぎがない場合、まず状況を理解する段階で相当な労力が必要になります。そういったリスクを回避するためにも、募集職種に「管理者候補」や「施設長補佐」といったサポート業務からスタートできる求人を選ぶようにしましょう。