ご存知の方も多いとは思いますが、訪問介護における生活援助の範囲が大幅に変更となる方針です。対象の利用者は要介護1~2の高齢者。生活援助の中でも今回で見直される項目は買い物や調理といったサービスです。
社会保障費削減のため介護保険の給付対象から除外
厚生労働省によると以下のような内容と狙いで踏み切る方針とのことです。
厚生労働省は、介護保険制度で要介護1~2と認定された軽度者向けサービスを大幅に見直す方針を固めた。具体的には、調理、買い物といった生活援助サービスを保険の給付対象から外すことを検討する。膨らみ続ける社会保障費を抑えるのが狙いで、抑制額は年約1,100億円、約30万人の利用者に影響が出る可能性もある。
引用元:介護保険、調理などの軽度者向けサービス見直しへ(読売新聞)
上記の変更は2017年にも実施する方針で、要介護1~2の高齢者の今後の生活が大きく変わることとなりそうです。
生活援助の内容変更を検討された背景
今回、訪問介護における生活援助の対応範囲が変更された背景には幾つかの批判と問題点がありました。中でも最も多かった意見が「家政婦代わりに訪問介護を利用している高齢者が多い」ということです。そもそも要介護1~2であれば、外出の際は歩行器を必要としますが、自力での買い物は可能な状態です。スーパーでシルバーカーを押している高齢者にも要介護1~2と認定を受けた方がいるでしょう。
また調理に関しては「介護保険で賄うのではなく民間の配食サービスを利用すべき」という意見もありました。なお、同じ生活援助の掃除や洗濯に関しては、地域によって民間業者が利用できない場合もあるため現状維持とのことです。
その他には「買い物の一部に本人が必要とする物以外が含まれるケースがある」や「買い物には日常品の範囲を超え趣味性の高い物が含まれる場合がある」といった問題点も多く、以前から本来の目的でもある自立支援とのズレが懸念されていました。
生活援助の変更はQOLの低下につながる
しかし、結局の企みは社会保障費のコスト削減。行政の会議で現場の意見は全く反映されていません。そもそも、介護サービスとは限られた利用枠内でどのサービスを利用する選び抜いてケアプランが作成されます。
つまり、利用者は出来ないから頼むのであって、それを除外してしまうと困る高齢者が続出するのではないでしょうか。また、日本の福祉介護で尊重されるQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の低下にもつながることが予測されます。
最終的な判断は訪問介護員に委ねられる
このままの流れだと、規定上では買い物や調理は対応しない方向になりそうですが、これまで通り最終的な判断は現場で動く訪問介護員に委ねられるでしょう。
通院介助の帰りにスーパーに立ち寄ったり、スーパーまで行かずとも近所のコンビニへ付き添うくらいならおそらく対応してあげたくなりますよね。チルド食品や冷凍食品など簡単な調理であれば、家事の合間に出来てしまいますよね。
訪問介護は、ホームヘルパーの「善意」によって生まれる利用者からの「感謝」も大きな原動力となっています。サービス内容を制限することで実質的な職員の業務負担は軽減されるかもしれませんが、介護業界で働く人を繋ぎ止めている「やりがい」を奪ってしまうことにもなりかねません。行政にはもっと慎重に物事を進めてもらいたいものです。