生活相談員という職業が誕生したきっかけは、1963年(昭和38年)に制定された老人福祉法です。当初は「生活指導員」という職業で、高齢者の自立支援を指導することが主な役割でした。
それから、介護サービスの多様化によって「職員に指導される介護」から「自らサービスを選ぶ介護」に変わり、生活指導員の役割が見直されました。
その後、2000年(平成12年)から始まった介護保険制度によって、生活指導員は生活相談員という名称に生まれ変わりました。
生活相談員の仕事内容や役割
生活相談員は「介護相談員」や「支援相談員」とも呼ばれていますが、仕事内容は基本的に同じ。介護サービスの総合窓口として、利用者様やご家族をサポートすることが一番の役割です。
老人ホームやデイサービスなど、サービス業態によって多少の業務の違いはあるものの、利用者面談からはじまり、入所手続き、ケアマネジャーとの連絡、ケアプランや介護計画の見直し、退所手続きまでを生活相談員が担います。
その他、施設に寄せられた問い合わせや苦情の対応、契約書や援助計画書の書類作成、介護費用の請求業務など、職場によって仕事内容は多岐に渡ります。
生活相談員の仕事内容
- サービスの利用者面談
- 入所や退所の手続き業務
- ケアマネジャーとの連絡窓口
- ケアプランや介護計画書作成の補助業務
- 利用者様やご家族の相談業務
- 地域自治体との連携・連絡業務
- その他、書類作成や問い合わせの対応など
利用者面談ではアセスメントを行う
アセスメントとは、利用者様が何を求めているかの情報収集を行い、フェイスシートを活用して分析を行うことです。
ファーストコンタクトで利用者様に最も近い存在の生活相談員は、ご本人様の介護状態や家庭環境といった情報から、どういったサービスを求めているか見出します。
アセスメントでフェイスシートに記載する情報の例
- 家族構成
- 現在の介護状況
- 介護度
- 認知度
- 健康状態
- 身体状態
- ADL(日常生活動作)
- IADL(手段的日常生活動作)
- 利用者様が望む生活
- ご家族の望む生活など
利用者面談で得た情報は、サービス担当者会議でケアマネジャーや介護職員などの施設関係者に共有。役割が異なる多方面からの意見を踏まえて、利用契約や介護計画の作成に着手します。
観察(モニタリング)
入所後、実際にサービスを利用してから気が付くことも多々あるでしょう。そこで、生活相談員は観察(モニタリング)を行い「何か不都合なことはないか?」「もっとこうするべきではないか?」など、利用者様の日頃の様子を継続的に調査します。
調査内容はケアマネジャーなどに共有され、必要に応じて再びサービス担当者会議を開き、介護計画の見直しも行います。
利用者様やご家族からの相談業務
入所前より入所後の方が、利用者様やご家族から相談を受ける機会が多くなります。サービス状況の確認、新たな要望や相談、時には苦情(クレーム)を直接言われる場合もあります。
とは言え、どんな内容であっても生活相談員は話しやすい環境を作り、コミュニケーションをとりながら利用者のニーズをしっかり理解することが求められます。
介護士やドライバーを兼業する生活相談員
生活相談員といった職業そのものに、法令上の明確な業務指定は存在せず、任せられる業務内容は職場の規模によって様々。
利用者様の総合的なサポートを主軸に置きながら、介護士と一緒に排泄介助や食事介助を行ったり、車で利用者様を送迎したり、書類作成や請求業務など事務作業を行うことも決して珍しくありません。
特に小規模事業所では、生活相談員のことを「何でも屋」と勘違いしている施設が多く、戸惑いながら働いてる方もいます。
名ばかりの生活相談員だけは避けたいということであれば、応募する求人は業務内容を確認して慎重に選びましょう。
生活相談員の主な職場
介護サービスの提供に生活相談員は欠かせない存在。そのため、ほとんどの介護施設では生活相談員を配置しています。業態による仕事内容の違いもありますので、明確な目的を持って職場を選びましょう。
生活相談員の職場例
- 有料老人ホーム
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- ケアハウス(軽費老人ホーム)
- グループホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- デイサービス(通所型介護施設)
- デイケア(通所リハビリテーション)
- 小規模多機能型居宅介護施設
- ショートステイ(短期入所生活介護)
生活相談員の平均年収と給料
時給 | 月給 | 年収 | |
---|---|---|---|
パート | 1054円 | – | – |
正社員 | – | 22万円 | 346万円 |
派遣社員 | 1437円 | 25万円 | 305万円 |
介護業界のなかでは、給料が良いと言える生活相談員。ケアマネジャーの必要性が見直される一方で、生活相談員の需要が高まっていることも要因でしょう。
ただし、生活相談員の仕事内容で説明した通り、単純に業務範囲が広すぎるから、手当などが付いて給料が高いケースも考えられます。
ですので、生活相談員への転職を検討している方は、給料の額面ばかりに魅了されず、募集要項をしっかり確認しましょう。
生活相談員の勤務時間と休日
基本的に、生活相談員は早番や夜勤といったシフトは存在せず、9時~17時といった一般的な勤務時間になります。ただし、利用者都合で朝早く出勤したり、夜間に面談を行ったりする場合もあります。
休日に関しては、24時間365日体制で高齢者を見守る老人ホームであっても、土日祝は休みとしている事業所が大半。しかし、生活相談員の地域連携を目的とした「地域ケア会議」が休日に行われることもありますので、必ず休みなるという訳にはいきません。
その他、法改正やシーズンによる利用者の増減で、仕事が忙しくなることもありますが、数ある介護職のなかでは比較的、休みが取りやすい職業だと言えるでしょう。
生活相談員に関連する資格
社会福祉主事任用資格
社会福祉主事任用資格とは、福祉施設などにおいて、社会福祉各法に定める援護、指導、育成、更生などを行うための資格。
社会福祉士
社会福祉士は、福祉分野全般の相談支援業務に関わる国家資格。ちなみに、社会福祉士を保有していれば、社会福祉主事任用資格も満たしていることになります。
精神保健福祉士
精神保健福祉士は、高齢者、障がい者、子供など、精神的な障害を持つ方の相談援助や社会福祉業務に関する国家資格です。
介護支援専門員(ケアマネジャー)
介護支援専門員はケアマネジャーとして働くために必要な資格。生活相談員の採用面接では特に優遇される資格です。
介護福祉士
介護福祉士は、介護士系資格で唯一の国家資格。取得には3年以上の介護経験が必要になるため、キャリアの証明にもなります。
福祉用具専門相談員
福祉用具専門相談員は、車椅子や介護ベッドなどの福祉用具の貸し出しや販売時に、適切なアドバイスを行う専門職の資格です。
福祉住環境コーディネーター
福祉住環境コーディネーター(1~3級)は、 東京商工会議所が認定する民間資格で、高齢者や障がい者に住みやすい住環境を提案するアドバイザーに欠かせません。
福祉コンサルタント(カウンセラー)
福祉コンサルタント(カウンセラー)は、社会保障施策への提言、高齢者などを対象としたニーズ調査・分析、各自治体での行政計画の策定支援などに関する資格です。
生活相談員のキャリアプラン
現場で高齢者を支える介護士とは異なり、生活相談員はマネジメント要素が強い職業。そのため、生活相談員を経験した方は、施設長やセンター長といった管理職を目指す方が多いようです。
また、より専門的な支援業務を身に付けるため、介護支援専門員の資格を取得してケアマネジャーを目指す方も珍しくありません。
生活相談員のやりがい
- 利用者様やご家族から信頼される
- 最適な介護サービスを提案できる
- 外部との連絡窓口として重要な役割がある
現場主義の介護業界ですが、外部との連携でサービスを支える生活相談員だからこそ、見えてくる問題点も多々あります。そういった観点を職場内で共有できれば、介護サービスを向上させるキーパーソンとして、仕事のやりがいを見出せるかもしれません。
また、生活相談員は利用者様やご家族にとっては、何でも気軽に相談できる身近な存在がゆえに、時には容赦ないクレームをぶつけられることもあります。しかし、そこから改善に繋げることができれば、間違いないく大きな信頼に変わるでしょう。
連絡役・調整役として板挟みになる大変さもありますが、利用者側からも職場関係者からも慕われる存在は、生活相談員だけの特権なのかもしれませんね。
生活相談員になるには?
生活相談員として働く場合、国が定めるの基準と各都道府県の自治体が定める基準があります。
国が定める基準
- 社会福祉主事任用資格者
- 社会福祉士の資格保有者
- 精神保健福祉士の資格保有者
各都道府県の自治体が定める基準
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格保有者
- 介護福祉士の資格保有者
- 老人福祉施設の施設長経験者
- その他、一定期間の介護職経験を有する方など
国が定める基準を満たさない場合でも、自治体が独自に定める基準を満たせば生活相談員として働くことは十分可能。実務未経験ではどうしても難しい職業ですが、1年以上の介護経験があれば、あとは採用面接次第です。
あとは、車で利用者様を送迎したり、パソコンを使った書類作成業務もあるので、普通自動車免許と最低限のITスキルは必要になるでしょう。
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