介護職は他の業界と比べてもサービス残業が常態化しているといわれています。なぜ介護職はサービス残業が当たり前になっているのか?今回はその理由についてご紹介していきます。
介護報酬で利益の頭打ちは決まっている
介護職員がサービス残業を強いられる最大の理由こそ介護報酬と言えるでしょう。提供したサービスによって国から支給される介護報酬が決まっており、その介護報酬こそが施設や事業所の利益となっています。つまり、施設や事業所はある程度利益の上限が決まっているということになります。
特に箱ものと呼ばれる、介護施設サービス、デイサービス、ショートステイなどもこれに当てはまります。箱ものサービスの場合は、介護保険法で受け入れられる利用者数に限度があります。受け入れ人数が決まっているということは、介護報酬の上限も決まっており、必然と収入にも上限があるということになります。
ある程度は職員の時間外手当も考慮された介護報酬となっているはずですが、施設や事業所の経営者としては少しでも資金を残したいという考えから、残業代が少ない、もしくは全く支払われないといった状況に至っています。
しかし、介護は残業手当が出ないからといって定時に帰れるような仕事ではありません。慢性的に人手が足りない業種ですので、仕方なく職員同士が助け合っている状況が当たり前となってしまっています。
介護職の残業の多さが問題
介護職は人を相手に行う仕事ですので、とりわけトラブルが起きやすい職業だと言えるでしょう。商品を扱う業態であれば物を対象としていますので、時間通りに業務を終わらせることも可能だと思いますが、介護の場合は高齢者が体調不良になった、転倒をしたなどのトラブルが日常的に起きています。
そうなれば、通常の業務に加え、トラブル時の対処時間も加わりますので、どうしても残業しなければいけなくなります。介護職員が不足している職場では、人手が足りない、業務対応しきれない、残業が多いけど残業代が出ない、さらに人が辞めていくといったように、負の連鎖が起きている職場も少なくありません。
介護報酬減額と加算の複雑化がさらなる問題に
このような状況をさらに悪化させることが、2015年1月の閣僚折衝で正式に決定した介護報酬の減額です。9年ぶりに2.27%減額された介護報酬は、多くの介護施設や介護事業所を廃業へ追い込んだ結果となりました。なんとか生き残った事業者も、今までと同じサービスを行っては利益は減ってしまうと頭を抱えている状態です。
介護報酬の減額を補うように新しい加算も追加されていますが、加算を得ようするとどうしても業務量が増えてしまい、結局は職員の残業時間が増えてしまうという矛盾も生じています。
忘れ去られた介護職員の賃上げ法案
介護報酬の減額によって懸念せさていた職員の給与問題ですが、同時期に介護職員の賃金を平均月12,000円アップさせる介護職員処遇改善策が可決しました。しかし、介護報酬の減額開始後から約1年経過した今でも、その恩恵を受けた介護職員はほとんどいないのが現状です。
介護職で「残業なし」「残業手当あり」は不可能なのか?
おそらく、今の日本の介護制度では「残業なし」「残業手当」といった職員への待遇改善は期待するだけ無駄でしょう。高齢化によってサービス利用者が増え、施設や事業所の収益が上がっても、末端の職員の給与に反映されるのは微々たるもの。業務ばかり増えて、給料は一向に上がらない状態が目に見えています。
どうしてもサービス残業が耐えられないということであれば、働き方自体を考え直すべきなのかもしれません。例えば、派遣社員なら時給制になるので、残業しても働いた分だけ給料に反映されます。また、派遣社員の高額な時間外手当を嫌う経営者は、出来る限り派遣社員に残業をさせないように配慮します。
その他にも、時給単価もパートより高額、さらに職員同士のトラブルが原因で職場を変更しても職歴が汚れる心配もありません。
現状を改善するための転職
もしかすると「正社員だから安定している」といった神話は、すでに崩壊しているのかもしれません。職員の賃金や待遇が政策の課題に上がる介護業界は特にそう言えるでしょう。自分の身を守れるのは自分だけ。現状を改善するためにも転職をおすすめします。
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