介護現場に外国人実習生が急増する?技術実習制度と在留資格で変わる日本の介護

介護現場に外国人実習生が急増する?技術実習制度と在留資格で変わる日本の介護

日本人を介護する外国人。この異様な光景を初めて目にした時、私はどこか切ない気持ちになりました。しかし、今後はさらにそういった場面を目にする機会が増えるでしょう。

それもそのはず。外国人介護士が増えるきっかけとなる法案が、先日の衆院法務委員会で可決されました。

目次

技術実習制度と在留資格で介護現場に外国人が増える

2016年10月21日の衆院法務委員会。与党と民進党などの賛成多数で可決された法案が、介護現場への外国人受け入れを強化した「技能実習適正実施・実習生保護法案」と「出入国管理・難民認定法改正案」です。

技能実習適正実施・実習生保護法案とは、簡単に言い換えると、日本で働きたい外国人を支援する制度になります。農業、漁業、建築、機械、清掃といった技術職が対象でしたが、今回、初めての対人サービスとして介護職が加わりました

参考:JITCO – 技能実習の職種・作業の範囲について

また、外国人が日本に留まる決まりを定めた出入国管理・難民認定法改正案では、在留資格に介護福祉士資格が追加されました。これにより、介護福祉士資格を持つ外国人は、日本に滞在できる期間が無期限となります。

参考:法務省 入国管理局 入管法

3本の柱で外国人介護士の普及を後押し

介護現場での外国人の受け入れは既に経済連携協定(EPA)で行われており、認定を受けている東南アジア(インドネシア、フィリピン、ベトナム)から来日し、2,000人以上の外国人が日本の介護現場で働いています。

今回の法改正で、経済連携協定(EPA)の他に「技術実習制度」と「在留資格」が加わり、今後は合計3種類の受入枠で、外国人介護士の普及を後押しする姿勢となります。

参考:財務省 経済連携協定(EPA)

外国人の訪問介護も解禁になる

現在、外国人介護士は特別養護老人ホームなどの介護施設でしか働くことができません。日本語での会話による不安もその理由のひとつですが、万が一トラブルが起きた時でも、すぐさま日本人職員が対応できるようにするためです。

しかし厚生労働省は、外国人が訪問介護事業所で働けるように経済連携協定(EPA)と協議し、就労範囲に訪問系サービスを追加する方針を明らかにしました。

これにより、外国人でも訪問介護員として利用者宅に一人で訪問し、介護サービスを提供することが可能になります。原則、介護福祉士資格を持っていることが条件となりますが、外国人ホームヘルパーは2017年に解禁となる見通しです。

参考:厚生労働省 外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会

外国人介護士を受け入れるメリット

外国人介護士を受け入れるメリット

外国人介護士を受け入れる最大のメリットは、やはり人手不足の解消です。日本の高齢者人口は増え続けており、2025年度には介護職員が約253万人必要とも叫ばれています。一方、介護職は「3K」とまで呼ばれ、人材雇用が難航している状態です。

そんな中で、わざわざ海外から働きに来日する外国人介護士は希望の光です。まさに「助っ人外国人」として、これからの日本を支えてくれる重要なキーパーソンとなるでしょう。

外国人介護士を受け入れるデメリット

外国人が日本で仕事をする場合、やはり文化や言葉の違いが大きな問題点となり、それが最大のデメリットを言えるでしょう。

日本で働く外国人介護士は、必要な知識やスキルを十分学んでおり、介護業務を行う上での支障はほとんどありません。

しかし、利用者による偏見や個人的な考えの押し付けなど、外国人実習生と高齢者のトラブルが後を絶たないとも聞きます。その結果、施設全体のサービスの質低下につながるといった懸念点もあるようです。

外国人介護士を受け入れるデメリット

また、職員同士のコミュニケーションにも言葉の壁が支障をきたします。早番と遅番など、口頭で業務を引き継ぐ申し送りでは、数十名分の様態や対応処置を短時間で伝えなければなりません。

しかし、医療や介護の現場は常に時間に追われています。そのようなプレッシャーの中では、緊張や疲れのせいで、日本人でも上手く喋ることは困難。それを外国人が務めるわけですから、本人は想像を絶するストレスとなるでしょう。

正確な原因は定かではありませんが、このように文化や言葉の問題で母国に帰ってしまう外国人も少なくありません

そうなれば、施設責任者は新たな人材確保にコストを使い、同僚職員は人材育成に時間をとられるでしょう。

受け入れる側の日本人がやるべき課題

受け入れる側として、どうしてもこちら(日本人)の都合で話しを進めがちですが、我々にも改善すべき問題点は数多くあります。

例えば、悪質な雇用主による外国人労働者の扱いです。技術実習制度や在留資格を利用して日本で働く外国人の中には、深刻な事情を抱えている方もいます。

そういった弱みにつけ込み、パスポートを取り上げたり、暴力をふるったり、人権侵害や差別的な扱い、賃金未払いなどが一部問題となっています。

介護現場での外国人の受け入れを強化する法案には、こういった悪質な雇用主を罰する法案も新たに追加されるようですが、法では裁けない内情部分は、やはり職場全体の意識を変えない限りどうにもならないでしょう。

パスポート

また、日本人の人材が確保できないからといって、外国人に頼りきってしまう状態も危険です。特に外国人実習生となれば、パートより安い賃金で雇うことができるでしょう。

さらに条件を満たせば国からの助成金が出る場合もあります。

介護現場での外国人の受け入れは、経営者にとってメリットが多い制度と言えるでしょう。

しかし、業界全体の平均賃金の低下若者の雇用低迷サービスの質の低下など、今の介護業界をさらに悪化させる原因になりかねません。

若者の雇用低迷

ですので、外国人はあくまで「助っ人」とし、介護事業の経営者は日本人の人材雇用を怠ってはなりません。10年先を見据えた採用を心がけ、引き続き、介護業界全体の雇用条件の改善が課題となります。

そして、外国人実習生を迎え入れる我々日本人介護士は、彼らの文化や気持ちを理解して、お互いが働きやすい職場環境を構築すべきでしょう

この改変を危機と捉えるのではなくチャンスとして考え、これから向える超高齢化社会に備える姿勢が求められているように感じます。

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